由緒
創建は平安時代の延喜19年(919年)、当地に建てられた安楽寺天満宮が現在の太宰府天満宮の始まりと伝えられます。
昌泰4年(901年)に右大臣であり、太宰府天満宮の祭神となる菅原道真は左大臣藤原時平らの陰謀(昌泰の変)のより筑前国大宰府へ左遷され、延喜3年(903年)に同地で病死しました。葬送の牛車が安楽寺の門前で動かなくなったことから、そこに留まりたいのだという道真の遺志によるものと考えられ、この地に埋葬され、延喜5年(905年)には祀廟が建立されました。
一方京都では延喜9年(909年)に藤原時平が病死したのをはじめ、陰謀を首謀したとされる者の死が相次ぎ、“道真の祟り”によるものと噂されるようになったため、延喜19年(919年)に怨霊を鎮めるべく醍醐天皇の勅命により藤原仲平が立派な社殿を墓所の上に造営し、この時が太宰府天満宮の創建とされています。
それでも“祟り”は鎮まらず、延喜23年(923年)に狼狽した朝廷は道真の官位を右大臣に復し、正二位の位階を追贈、元号も延長と改元しました。しかしついに延長8年(930年)には醍醐天皇臨席のもと貴族が居ならぶ内裏の清涼殿に落雷し、死傷者が出る清涼殿落雷事件が起きます。醍醐天皇は助かりましたが、この事件をきっかけに病床に伏せ、3カ月後には崩御します。
その後も災厄が起こるたびに怨霊によるものと恐れられたため京都の北野に社殿が造営されて「北野天満宮天神」の勅号が贈られ、大宰府の社も安楽寺天満宮と称すようになります。“宮”の社号は本来天皇や皇族を祀る神社に使用されるもので、怨霊への恐れが見てとれます。一条天皇の時代になると生前の右大臣の官位を越える左大臣、さらに太政大臣の官位を贈ったほか、寛弘元年(1004年)には北野天満宮に天皇自ら行幸するとともに太宰府へも勅使を遣わせています。
平安時代も後期になると徐々に怨霊信仰も薄れ、道真への信仰は様々な形で各地へ広がっていきました。特に道真が学問に秀でていたことから学問の神として信じられるようになります。
安楽寺天満宮は戦国時代にはたびたび戦乱に巻き込まれて社殿が焼損し、一時荒廃しましたが、筑前国の領主となった小早川隆景によって再建され、天正19年(1591年)に現在の本殿が造営されました。江戸時代になっても福岡藩主黒田氏によって復興され、盛大な神社になりました。「黒田官兵衛」として知られ、文化人でもあった黒田孝高は連歌の神として信仰されるようになった菅原道真を深く崇敬したと伝えられます。
明治に入ると神社の国家管理により、“宮”の社号が基本的に皇族を祭神とする神社以外は使用できなくなったため太宰府神社と改名します。また、神仏分離により天満宮の建立以来共存してきた安楽寺は廃寺となります。
戦後、神社の国家管理が終わると昭和22年(1947年)に社号を太宰府天満宮として現在に至ります。
摂末社
境内社
参道と心字池、菖蒲池の周辺に以下の7社の摂社と末社があります。
- 今王社
- 祭神:不詳
- 障りがあって本殿に参拝できない人が参拝する末社とされる。
- 志賀社
- 祭神:底津綿津見神、中津綿津見神、上津綿津見神
- 保食社
- 祭神:保食神
- 楓社
- 祭神:宣来子命
- 菅原道真の奥方、島田宣来子を祀る摂社。
- 人丸社
- 祭神:柿本人麻呂
- 水神社
- 祭神:不詳
- 如水社
- 祭神:黒田孝高
本殿裏手に以下の6社の摂社が並んでいます。
- 福部社
- 祭神:島田忠臣
- 菅原道真の詩作の師を祀る摂社。
- 老松社
- 祭神:菅原是善、伴氏
- 菅原道真の父母を祀る摂社。
- 御子社
- 祭神:菅原高視、菅原景行、菅原兼茂、菅原淳茂
- 菅原道真の子を祀る摂社。4社並ぶ。
本殿に向かって右側の回廊の外側に以下の13社の摂社と末社が並んでいます。
- 中島神社
- 祭神:田道間守神
- 靏寿尼社
- 祭神:靏寿尼
- 菅原道真の伯母を祀る摂社。
- 野見宿禰社
- 祭神:野見宿禰
- 菅原家の祖神を祀る摂社。
- 尊意社
- 祭神:法性坊尊意
- 皇大神宮
- 祭神:天照大神
- 天穂日命社
- 祭神:天穂日命
- 菅原家の祖神を祀る摂社。
- 金刀比羅社
- 祭神:大物主神
- 御霊社
- 祭神:菅家御祖霊
- 菅原家の祖霊を祀る摂社。
- 宰相和泉社
- 祭神:菅原輔正、菅原定義
- 菅原道真の四世孫と六世孫を祀る摂社。
- 大夫社
- 祭神:度会春彦大夫
- 菅原道真の従者を祀る摂社。
- 素佐雄社
- 祭神:素盞雄命
- 竈門社
- 祭神:玉依姫命
- 高良社
- 祭神:武内宿禰命
- 櫛田社
- 祭神:大若子神
境内奥に以下の末社があります。
- 天開稲荷社
- 祭神:宇迦之御霊神
境外社
また、近隣に以下の境外社があります。
- 天拝山社
- 祭神:菅原大神
- 所在地:筑紫野市武蔵706
- 太郎左近社
- 祭神:不詳
- 所在地:太宰府市石坂4丁目7
- 安行社
- 祭神:味酒安行
- 所在地:太宰府市宰府4丁目9-16
- 榎社
- 祭神:浄妙尼
- 所在地:太宰府市朱雀6丁目18-1