天照大御神と須佐之男命の誓約
伊邪那岐命に追放された須佐之男命は最後に姉の天照大御神に会ってから根之堅洲国へ行こうと思い、高天原へ昇ります。すると山や川が荒れ、大地が震えたので、天照大御神は須佐之男命が高天原に侵攻してきたと思い、髪を角髪に結いなおし、左右の角髪と鬘、それに左右の手にたくさんの勾玉に緒を通した玉飾りを巻き付け、背中に1000本、脇に500本の矢を携えると、雄叫びを上げて硬い土を沫雪のように蹴散らし、須佐之男命を待ち受けました。
天照大御神は何をしに来たのかと須佐之男命を問い詰めました。須佐之男命は邪心はないと言ってことの経緯を説明しました。すると天照大御神は、ならばどうやってあなたの心が清く正しいかを証明するのでしょうと問うたので、須佐之男命は疑いを晴らすために宇気比をして子を生みましょうと提案し、二神は天の安河を挟んで宇気比を行います。
まず、天照大御神が須佐之男命の十拳剣を三つに打ち割ると天真名井の水ですすいで噛み砕き、吹き出します。するとその息の霧からは多紀理毘売命、市寸嶋比売命、多岐都比売命の三柱の女神が生まれました。
多紀理毘売命は奥津嶋比売命、市寸嶋比売命は狭依毘売命とも言います。この三柱の女神は、多紀理毘売命は胸形の奥津宮、市寸嶋比売命は胸形の中津宮、多岐都比売命は胸形の辺津宮にそれぞれ鎮座して胸形君が祀っています。
続いて、須佐之男命が天照大御神が勾玉を天真名井の水ですすいで噛み砕いて吹き出します。するとその息の霧からは五柱の男神が生まれました。
左の角髪に巻いていた勾玉からは正勝吾勝々速日天之忍穂耳命、右の角髪に巻いていた勾玉からは天之菩卑能命、鬘に巻いていた勾玉からは天津日子根命、左手に巻いていた勾玉からは活津日子根命、右手に巻いていた勾玉からは熊野久須毘命が生まれました。
天照大御神は五柱の男神は自らの子で、先に生まれた三柱の女神は須佐之男命の子であると言い、須佐之男命は自らの十拳剣から生まれたのが穏やかな女神だったことから潔白が証明され、自分の勝ちだと宣言しました。
そうして須佐之男命は高天原に入る許しを得ます。