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岩戸隠れ

記事Oct.23rd, 2020
天照大御神が隠れてしまい、世界が暗闇に包まれてしまう話。
史料によって解釈が異なる場合があります。
史料によって解釈が異なる場合があります。

物語

岩戸隠れ

須佐之男命すさのおのみこと高天原たかまがはらに入ることを許されましたが、勝ちに乗じて田を荒らし、畔を埋め、御殿に屎をまき散らすなどの狼藉を働きました。神々は天照大御神あまてらすおおみかみに苦情を言いますが、天照大御神あまてらすおおみかみは、考えあってのことなのだろうと、咎めず須佐之男命すさのおのみことを庇います。しかし、天照大御神あまてらすおおみかみが機屋で神御衣かむみそを織らせていたとき、須佐之男命すさのおのみことは機屋の屋根に穴をあけて、皮を剥いだ馬を落とし入れます。この混乱で一人の服織女に梭が刺さって死んでしまいました。

天照大御神あまてらすおおみかみはこれに心を痛め、天石屋あまのいわやと呼ばれる洞窟の戸を開けてその中に閉じこもってしまいます。太陽神である天照大御神あまてらすおおみかみを失った高天原たかまがはら、それに葦原中国あしはらのなかつくにも闇に包まれ、夜がずっと続きました。神々は騒めき、あらゆる災いが起こりました。困った八百万の神やおよろずのかみ天の安河あめのやすかわの川原に集まり、対応を相談しました。そして思金神おもいかねのかみの案によりさまざまな儀式が行われます。

まず、常世長鳴鳥とこよのながなきとりを集めて一斉に鳴かせました。そして、鍛冶師の天津麻羅あまつまらを探し、伊斯許理度売命いしこりどめのみこと天の安河あめのやすかわの上流の天堅石あめのかたしわ天金山あめのかなやまの鉄で鏡を作らせました。また、玉祖命たまのおやのみことにたくさんの八尺瓊勾玉やさかにのまがたまを紐に通した首飾りを作らせました。天児屋命あめのこやねのみこと布刀玉命ふとだまのみこと天香山あまのかぐやまの雄鹿の肩の骨と天香山あまのかぐやま波波架ははかの木で占いをさせ、根ごと掘り起こした天香山あまのかぐやま五百津真賢木いおつまさかきの上の方の枝に八尺瓊勾玉やさかにのまがたまの首飾り、中ほどの枝に八尺鏡やたのかがみ、下の方の枝に白丹寸手しらにきて青丹寸手あおにきてをかけ、これを布刀玉命ふとだまのみこと御幣ごへいとして捧げ、天児屋命あめのこやねのみこと祝詞のりとを唱えます。最後に天手力男神あめのたぢからおのかみ天石屋あまのいわやの脇に隠れました。

そして天宇受賣命あめのうずめのみこと天香山あまのかぐやま天之日影あめのひかげを襷にしてかけ、天之真拆あめのまさきかづらにして、天香山あまのかぐやまの笹の葉を手に持って天石屋あまのいわやの前で桶を伏せて踏み鳴らし、神懸かりかむがかりして服をはだけさせてきわどい恰好で舞い歌いました。すると八百万の神やおよろずのかみ高天原たかまがはらが鳴り轟くように笑いました。

これを聞いた天照大御神あまてらすおおみかみは怪しんで岩戸をわずかに開け、なぜ自分が岩戸に篭って世界が闇に包まれているのになぜ天宇受賣命あめのうずめのみことは楽しそうに舞い歌い、神々は笑っているのか問いました。天宇受賣命あめのうずめのみことは、あなた様よりも高貴な神がおいでになったので皆喜び舞い歌っているのだと返しました。天児屋命あめのこやねのみこと布刀玉命ふとだまのみこと八尺鏡やたのかがみを差し出すと、天照大御神あまてらすおおみかみは鏡に映った姿がその貴い神だと思い、もっとよく見ようと岩戸をさらに開けました。

天照大御神あまてらすおおみかみが岩戸から少し出ると陰に隠れていた天手力男神あめのたぢからおのかみがその手を取って引きずり出し、すかさず布刀玉命ふとだまのみこと注連縄しめなわ天石屋あまのいわやの入口に張って再び入れないようにしました。すると天照大御神あまてらすおおみかみが岩戸から出たことで高天原たかまがはら葦原中国あしはらのなかつくには再び明るくなりました。

八百万の神やおよろずのかみはこの事態を引き起こした須佐之男命すさのおのみことに所有する品々を納めさせ、髭と手足の爪を切って高天原たかまがはらから追放しました。

用語

登場する神様

天照大御神あまてらすおおみかみ
太陽の神。高天原の主宰神。
須佐之男命すさのおのみこと
荒ぶる神。

高天原の神々

思金神おもいかねのかみ
知恵の神。
天津麻羅あまつまら
鍛冶の神。
伊斯許理度売命いしこりどめのみこと
鋳造の神。
玉祖命たまのおやのみこと
宝飾の神。
天児屋命あめのこやねのみこと
祝詞の神。
布刀玉命ふとだまのみこと
占いの神。
天手力男神あめのたぢからおのかみ
腕力の神。
天宇受賣命あめのうずめのみこと
芸能の神。

登場する場所

高天原たかまがはら
神々が住む天上界。
葦原中国あしはらのなかつくに
高天原と黄泉国の間にある地上の世界。
天石屋あまのいわや
天岩戸あめのいわととも。高天原にある岩でできた洞窟。天上界にありますが、宮崎県の高千穂町など各地に天岩戸とされる場所の伝承が残る。
天の安河あめのやすかわ
高天原を流れる川。
天金山あめのかなやま
高天原にある鉄鉱が取れる山。
天香山あまのかぐやま
高天原にある山。

登場する道具

神御衣かむみそ
神に捧げられる衣服。
八尺鏡やたのかがみ
のちに三種の神器の一つとなる鏡。
八尺瓊勾玉やさかにのまがたま
のちに三種の神器の一つとなる勾玉。
白丹寸手しらにきて
コウゾの繊維でつくった布。
青丹寸手あおにきて
麻の繊維でつくった布。
かずら
草木でできた髪飾。
注連縄しめなわ
結界の役割を持つ紙垂をつけた縄。

他の用語

岩戸隠れいわとがくれ
天照大御神が天岩戸に隠れたこと。
八百万の神やおよろずのかみ
たくさんの神々。
常世長鳴鳥とこよのながなきのとり
長く鳴き、夜の終わりを知らせる鶏。
天堅石あめのかたしわ
高天原の硬い岩。
波波架ははか
上溝桜の木。
五百津真賢木いおつまさかき
青く茂った真賢木。真賢木は榊に限らず常緑樹のことを指した。
御幣ごへい
祭祀で神前に捧げられる捧げ物。
祝詞のりと
祭祀で神に対して唱えられる言葉。
天之日影あめのひかげ
高天原のヒカゲノカズラ。
天之真拆あめのまさき
高天原のツルマサキ。
神懸かりかむがかり
神霊が人に乗り移ること。
史料によって解釈が異なる場合があります。
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