黄泉国訪問
伊邪那岐命は伊邪那美命を取り戻そうと黄泉比良坂を通って黄泉国へ行きます。黄泉国に着いた伊邪那岐命は黄泉国の御殿にいる伊邪那美命に扉越しに、一緒に創った国土がまだ完成していないので帰ろうと呼びかけました。これに対して伊邪那美命は黄泉国の食べ物を食べて黄泉の住人になってしまったので帰れないと答え、さらに黄泉神と相談しに行くので自らの姿を見ないように求めました。
しかし、伊邪那美命がなかなか戻ってこないため、待ちきれなくなった伊邪那岐命は髪につけていた櫛の端の歯を折って、それに火を灯して中に入ってしまいました。そこで見た伊邪那美命は醜く腐り、八柱の雷神、大雷、火雷、黒雷、折雷、若雷、土雷、鳴雷、伏雷が纏わりついていました。
その姿を見た伊邪那岐命は逃げ出してしまい、これに怒った伊邪那美命は黄泉醜女を使って追いかけました。伊邪那岐命が投げた黒御縵の髪飾りを投げ捨てるとそこからブドウが生え、黄泉醜女がそれに夢中になっている間に逃げました。しかし、なおも黄泉醜女が追ってくるので右の角髪に差していた湯津津間櫛を投げ捨て、そこから生えたタケノコに黄泉醜女が夢中になっている間に逃げました。
伊邪那美命は自らに纏わりついた八柱の雷神と1500の黄泉軍を送り込みますが、伊邪那岐命は十拳剣を振りながら黄泉比良坂のふもとまで逃げ延びました。伊邪那岐命がそこあった桃の木から実を取って投げつけたところ雷神と黄泉軍は退散しました。ここで伊邪那岐命は桃に、もし同じように苦しんでいる人がいたら助けてくれと命じ、意富加牟豆美命と名づけました。
最後は伊邪那美命が自ら追ってきますが、伊邪那岐命は千引岩で黄泉比良坂を塞ぎました。閉ざされて怒った伊邪那美命はこれから一日に1000人ずつ人間を殺そうと言いました。 これに対して伊邪那岐命はそれなら人間が滅びぬよう一日に1500人生ませようと返し、離縁しました。こうして人は一日に1000人死に、1500人生まれるようになりました。
その後伊邪那美命は黄泉の主宰神、黄泉津大神となりました。また、伊邪那岐命に追いついたことから道敷大神とも呼ばれます。
黄泉比良坂を塞いだ岩は道返之大神、もしくは黄泉戸大神と名づけられました。そして、黄泉比良坂とは出雲国の伊賦夜坂のことです。