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妻問いと神語り

記事Oct.28th, 2020
恋多き大国主神が愛の詩を交換する話。
史料によって解釈が異なる場合があります。
史料によって解釈が異なる場合があります。

物語

妻問い

大国主神おおくにぬしのかみ八上比売やがみひめを宮殿に迎えますが、八上比売やがみひめは正妻となった須勢理毘売命すせりびめのみことの嫉妬を恐れて大国主神おおくにぬしのかみとの間に生まれた子を木の俣に刺し挟んで稲羽いなばへ逃げ帰ってしまいました。この子は木俣神きまたのかみ、もしくは御井神みいのかみと言います。

またある時 大国主神おおくにぬしのかみ沼河比売ぬなかわひめを娶ろうと高志国こしのくにへ出かけました。沼河比売ぬなかわひめの家を訪れた大国主神おおくにぬしのかみは戸越しに歌を詠みました。

八千矛神やちほこのかみ八島国やしまのくにで妻を娶ること出来ずにいたが、遠く高志国こしのくにに賢く麗わしい女がいると聞いてはるばるやって来た。太刀の紐も解かず、上着も脱がないまま乙女の寝ている家の板戸を押し揺すぶっていると、緑の山にぬえが鳴き、野の雉は騒ぎ、庭の鶏も鳴いている。忌々しく鳴いている鳥どもを打ち懲らして鳴き止ませられないものか。このことを語って伝えよう。

すると沼河比売ぬなかわひめは戸を開けずに家の中から応えました。

八千矛神やちほこのかみよ、私は萎え草のような女です。心は今は浜辺の千鳥のようですが、やがてあなたの鳥となりますのでどうか殺さないでください。青山に日が沈めば夜が来ます。あなたは朝日のように微笑みかけ、栲網たくづののような白い腕と沫雪のような若々しい胸に触れ、互いに抱き合って、互いの手を枕にして、足を伸ばして休めることでしょう。ですから恋を急かさないでください。八千矛神やちほこのかみよ。このことを語って伝えよう。

大国主神おおくにぬしのかみ沼河比売ぬなかわひめはこの晩は会いませんでしたが翌晩には会って結婚しました。

神語り

恋多き大国主神おおくにぬしのかみの正妻であった須勢理毘売命すせりびめのみことはとても嫉妬深かく、困った大国主神おおくにぬしのかみ倭国やまとのくにへ出かけようとしていた時に、片手を馬の鞍にかけ、片足を鐙にかけて、須勢理毘売命すせりびめのみことへこう詠いました。

ぬばたまのように黒い衣を着て、水鳥が自分の胸を見るように自分の服装を袖を揚げて見たがこれは似合わない、磯に投げ棄ててしまえ。鴗鳥そにどりのように青い衣を着て、水鳥が自分の胸を見るように自分の服装を袖を揚げて見たがこれも似合わない、磯に投げ棄ててしまえ。山里で求めた茜で染めた衣を着て、水鳥が自分の胸を見るように自分の服装を袖を揚げて見たがこれは似合う。愛しい妻よ、私が群鳥のように大勢で群れて飛んで行ったなら、君は泣かない言うだろうが、山の一本のすすきのように項垂れて泣き、朝霧が立つだろう。若草のような私の妻よ。このことを語って伝えよう。

すると須勢理毘売命すせりびめのみことは杯を捧げ、大国主神おおくにぬしのかみの傍でこう詠んで応えました。

八千矛神やちほこのかみ、我が大国主神おおくにぬしのかみよ。あなたは男ですから、廻った磯や岬の隅々にまで若草のような妻を持つでしょう。しかし私は女ですからあなたを除いては夫はおりません。綾垣あやがきのふわふわとしている布張、柔らかな苧衾むしぶすま栲衾たくぶすまがざわざわと鳴る下で、栲網たくづののような白い腕と沫雪のような若々しい胸に触れ、互いに抱き合って、互いの手を枕にして、足を伸ばして休めることでしょう。さあ美味しい御酒をお召し上がりください。

そうして二神は杯を交わして愛を固く誓いあい、今に至るまでともに鎮座しています。また、これを“神語りかむがたり”と言います。

大国主神の他の妻

大国主神おおくにぬしのかみ胸形むなかた奥津宮おくつぐう多紀理毘売命たぎりひめのみことを娶り、多紀理毘売命たぎりひめのみこととの間に阿遅鉏高日子根神あじすきたかひこねのかみ高比売命たかひめのみことを生みました。

高比売命たかひめのみこと下光比売命したてるひめのみこととも言い、阿遅鉏高日子根神あじすきたかひこねのかみは今は迦毛大御神かものおおみかみと呼ばれます。

また、神屋楯比売命かむやたてひめのみことを娶り、神屋楯比売命かむやたてひめのみこととの間に事代主神ことしろぬしのかみを、八島牟遅能神やしまむぢのかみの娘の鳥取神ととりのかみを娶り、鳥取神ととりのかみとの間に鳥鳴海神とりなるみのかみを生みました。

用語

登場する神様

大国主神おおくにぬしのかみ
八千矛神やちほこのかみとも。

大国主神の妻

八上比売やがみひめ
稲羽にいる女神。大国主神の最初の妻。
須勢理毗売命すせりびめのみこと
大国主神の正妻。須佐之男命の娘。
沼河比売ぬなかわひめ
高志にいる女神。
多紀理毘売命たぎりひめのみこと
天照大御神と須佐之男命の誓約で生まれた宗像三女神の一柱。玄界灘に祀られる道の神。
神屋楯比売命かむやたてひめのみこと
詳しい記述はない。
鳥取神ととりのかみ
八島牟遅能神の娘。詳しい記述はないが神事の神とされる。

大国主神の子

木俣神きまたのかみ
大国主神と八上比売の子。御井神とも。木の神や水の神とされる。
阿遅鉏高日子根神あじすきたかひこねのかみ
迦毛大御神かものおおみかみとも。大国主神と多紀理毘売命の子。雷神、もしくは農耕の神とされる。
高比売命たかひめのみこと
下光比売命したてるひめのみこととも。大国主神と多紀理毘売命の子。雷神。
事代主神ことしろぬしのかみ
大国主神と神屋楯比売命の子。託宣、もしくは漁業の神。えびすと同一視される。
鳥鳴海神とりなるみのかみ
大国主神と鳥取神の子。神事の神とされる。

他の神

八島牟遅能神やしまむぢのかみ
鳥取神の父。

登場する場所

高志国こしのくに
越国こしのくにのこと。現在の福井県から山形県にまたがる地域。
八島国やしまのくに
日本の異称。
倭国やまとのくに
大和国やまとのくに。現在の奈良県。
胸形むなかた
現在の福岡県宗像市。
奥津宮おくつぐう
現在の宗像大社沖津宮。沖ノ島にある。

登場する道具

栲網たくづの
コウゾの繊維で作った綱。
綾垣あやがき
絹の幕。
苧衾むしぶすま
絹の夜具。
栲衾たくぶすま
コウゾの繊維で作った夜具。

他の用語

妻問いつまどい
夫が妻の下に通う婚姻の形態のこと。
ぬえ
トラツグミのこと。
ぬばたま
ヒオウギの黒い実のこと。
鴗鳥そにどり
カワセミのこと。
神語りかむがたり
詩を交わして恋を語り合うこと。
十七世神とおまりななよのかみ
須佐之男命の子孫である17世代の神々。ただし、十五柱の神しか記述はない。
史料によって解釈が異なる場合があります。
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