このウェブサイトはご利用の端末での閲覧に対応していません。
This website does not support your device.

豊玉毘売の出産

記事Nov.14th, 2020
火遠理命が約束を破って豊玉毘売の出産を覗いてしまう話。
史料によって解釈が異なる場合があります。
史料によって解釈が異なる場合があります。

物語

豊玉毘売の出産

ある日、豊玉毘売とよたまひめ火遠理命ほおりのみことのもとへやってきました。豊玉毘売とよたまひめは、私は身ごもり、もうすぐ産む時期になったが、天津神あまつかみ御子みこ海原うなはらで産むべきではないので、こうやって来たのだと言いました。

すぐに海辺の波打ち際に鵜の羽を葺草ふきくさの代わりにして産屋うぶやが作られましたが、その産屋うぶやの屋根が葺き上がる前に前に豊玉毘売とよたまひめは産気づいてしまったため産屋うぶやに入りました。

豊玉毘売とよたまひめは産むときになると火遠理命ほおりのみことに、他国の者は子を産む時には本来の姿になり、私も本来の姿で産むので、絶対に私の姿を見ないようにと言いました。

しかし、火遠理命ほおりのみことはその言葉を不思議に思って産もうとしているところを覗いてしまいました。すると豊玉毘売とよたまひめ八尋和邇やひろわにに化けて、這いまわり身をくねらせていました。

火遠理命ほおりのみことは驚いて逃げ出してしまい、覗かれたことを知った豊玉毘売とよたまひめはとても恥に思い、私はこの海の道を通って行き来しようと思っていましたが、私の本来の姿を見られてしまい、これは恥ずかしいことですと言って、産んだ子を置いたまま海坂うなさかを塞いで帰ってしまいました。

このような経緯で生まれたこの子は天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみことと言います。

しかし、豊玉毘売とよたまひめは覗かれたことを恨みながらも恋しい思いに耐え切れず、この子を養育するという理由で妹の玉依毘売たまよりひめを送り、そして詩を詠いました。

赤い玉は通した紐も光るほど美しいですが、白い玉のようなあなたの姿が貴いことです。

すると火遠理命ほおりのみことはこう詠って答えました。

水鳥の鴨が鳴く島で、私が添い寝した愛しい妻のことを私は忘れない、永遠に。

火遠理命ほおりのみことは580年の間高千穂宮たかちほのみやにいました。御陵みささぎ高千穂山たかちほのやまの山の西にあります。

鵜葺草葺不合命の子

天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみことはその叔母の玉依毘売たまよりひめとの間に五瀬命いつせのみこと稲氷命いなひのみこと御毛沼命みけぬのみこと若御毛沼命わかみけぬのみことを産みました。

若御毛沼命わかみけぬのみこと豊御毛沼命とよみけぬのみこともしくは神倭伊波礼毘古命かむやまといわれびこのみこととも言います。

御毛沼命みけぬのみことは海を越えて常世国とこよのくにへ渡り、稲氷命いなひのみことは母の国である海原うなはらへ行きました。

用語

登場する神様

火遠理命ほおりのみこと
邇邇芸命と木花佐久夜毘売の子。天津日高日子穂穂手見命あまつひこひこほほでみのみこと日子穂穂手見命ひこほほでみのみこととも。火の神、もしくは豊穣の神。
豊玉毘売とよたまひめ
火遠理命の妻。綿津見神の娘で玉依毘売の姉。海の神。
玉依毘売たまよりひめ
綿津見神の娘で豊玉毘売の妹。海の神。
天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと
鵜葺草葺不合命うがやふきあえずのみこととも。火遠理命と豊玉毘売の子。詳しい記述はない。

鵜葺草葺不合命の子

五瀬命いつせのみこと
鵜葺草葺不合命と玉依毘売の子。のちに若御毛沼命とともに東征する。
稲氷命いなひのみこと
鵜葺草葺不合命と玉依毘売の子。海原へ行く。
御毛沼命みけぬのみこと
鵜葺草葺不合命と玉依毘売の子。常世国へ渡る。
若御毛沼命わかみけぬのみこと
豊御毛沼命とよみけぬのみこと神倭伊波礼毘古命かむやまといわれびこのみこととも。鵜葺草葺不合命と玉依毘売の子。のちの初代天皇、神武天皇。

登場する場所

海原うなはら
海の国。綿津見神が支配している。
海坂うなさか
海原へ通じる坂。
高千穂宮たかちほのみや
邇邇芸命が降臨してから宮が置かれた場所。宮崎県などに伝承地がある。
高千穂山たかちほのやま
宮崎県と鹿児島県の県境にある高千穂峰のこととされる。ただし、他の場所とする伝承もある。
常世国とこよのくに
海の彼方にあるとされる異世界。

他の用語

天津神あまつかみ御子みこ
天津神の子。ここでは火遠理命の子。
葺草ふきくさ
屋根を葺くのに用いる草。
産屋うぶや
血が穢れとされていたことから出産のために建てられる母屋とは別の小屋。
御陵みささぎ
皇室の墓。
八尋和邇やひろわに
8尋の長さの和邇。1尋は約1.8m。和邇はサメのこととされる。
史料によって解釈が異なる場合があります。
史料によって解釈が異なる場合があります。
一番上へ
トップにもどる
シェアする
シェアする
Facebookでシェアする
ツイート
Google+でシェア
Pocket
はてなブックマーク